PC譲りの極めて高い質感を実現。真のVAIOスマホ「VAIO Phone Biz」徹底レビュー
VAIOの名の付くスマートフォンは、一度既にAndroidOSを搭載する機種が発売済みですが、そちらの機種の開発にはVAIO株式会社ではあまりタッチしていなかったようで、端末自体にいわゆる「VAIOらしさ」があまり感じられませんでした。
ですが、Windows 10 Mobileを搭載して登場したVAIO Phone Bizは製造こそ中国の企業にODMしていますが、スペックの設定や設計、デザインと外装の作り込みなどは全面的にVAIO社が行なっています。
このため一目見てさわっただけで「らしさ」をしっかりと感じられる機種に仕上がっています。
恐らくWindows 10スマホの中では最も持つこと自体に喜びを感じられる作り込みで、他社から発売されているAndroidやiOSのハイエンド機種とも十分に競えるだけの端末の作りの良さを実現できた機種に仕上がっていると思います。
さて、そんなVAIO Phone Bizですが筆者も発売当日に入手することができました。しばらく使ってみることで色々と見えてきましたので、使用感などをレポートしてみたいと思います。
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目次
スペックおさらい
VAIO Phone Bizは今(5/16日現在)、日本国内で入手して利用可能なWindows 10スマホの中では最も高いスペックを実現した機種です。
液晶はここまでに発表されている機種よりも高解像度のフルHD(1920 x 1080)のものを搭載し、サイズも一回り大きな5.5型となっています。この点では競合相手はWindows 10スマホと言うよりは、AndroidやiOSのハイエンド機種という形になります。
スマホの心臓部であるSoCには、Snapdragon 617を搭載。先行したNuAns NEOと同等のチップとなっていて、エントリー機種とは一線を画する性能を実現しています。CPU部は8コアで最高1.5GHzで動作します。
メインメモリはContinuumを本格的に利用することも考慮に入れてか、3GBと余裕のあるスペックです。
本体のサイズは約77mm x 156.1mm x 8.3mmと、面積は大きめですが厚さは非常に薄くなっています。重さは167gと少し重めでしょうか。
リアカメラには約1300万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用し、フロントカメラには、約500万画素のセンサーを搭載しています。
バッテリーの容量は2800mAhで、最近のスマートフォンとしては標準的な容量を確保しています。
対応する携帯電話の電波帯は、LTEがバンド1、3、8、19、21となっています。また、SIMロックフリーの端末としては珍しくドコモのIOT試験にパスしていて、ドコモ網のキャリアアグリゲーションを利用する最高225Mbpsの高速通信にも対応します。
手にしてのファーストインプレッション
VAIO Phone Bizは化粧箱も非常にシックで落ち着いた作りです。今時のスマートフォン的なとてもシンプルな箱に収まっています。
付属品も最低限のシンプルなものですが、マイクロUSB対応のケーブルだけではなくACアダプタ本体も付属しているところは親切です。
本体を最初に持ってみて感じたのは、その軽さです。絶対的な質量はそこそこの数値で特に軽い端末ではありませんが、画面サイズが大きい分のフットプリントがあるせいか、手にしてみると非常に軽く感じられます。
またサンドブラスト仕上げのようになっている背面の金属筐体がサラサラした感触で、夏でもべたつくことなく持ち心地が良さそうな雰囲気です。金属らしいひんやりした感触もなかなかいい感じです。
液晶が大きい分、横幅も広くなっているのですが、持ちにくさはほとんど感じません。裏面の端が少しラウンドして持ち上がっていて、そこから少し上にはっきりしたエッジが作られている関係からか、実際の厚みよりもとても薄さを感じる本体になっています。
5型クラスの液晶を持つスマートフォンでも既に成人男性の標準的な指では片手操作が難しくなっていて、普段から両手で操作する癖が付いているせいか、一回り大きな液晶を載せたVAIO Phone Bizでも扱いにくさは全くと言っていいほど感じません。
各種コネクタなどの外観
VAIO Phone BizのUSBコネクタは現時点ではより一般的なマイクロUSBコネクタを採用しています。このため充電やパソコンなどとの接続には、他の多くのスマートフォンのケーブルなどがそのまま流用できるメリットがあります。
電源ボタン、ボリュームボタンも一般的な形状です。
SIMカードとマイクロSDカードはトレイに載せて一緒に押し込む形式。
VAIO Phone BizはマイクロSIMですが、nanoSIMなどをアダプタに入れて差し込む場合には、ちょっとコツがいる感じになります。入れ損なうと電話機側の端子を痛めたり、nanoSIMアダプタが抜けなくなったりする可能性もありますので、挿入の際には気をつけた方が良いでしょう。
電源投入から最初のサインインまで
手元に届いたVAIO Phone Bizはバッテリーが8割以上充電された状態のものが届きましたが、初期設定は念のためACアダプタを接続した状態で行ないます。
付属のケーブルはコネクタ部分がストレートな形状のごく普通のものです。
初期設定画面などはパソコン版のWindows 10と良く雰囲気が似たもので、一度でもパソコンなどでWindows 10を触ったことがある人であれば、ほとんど迷うことなく初期設定を進めることが出来るでしょう。
初期設定の処理はテンポ良く進みますがバッテリーの充電も一緒に行なわれていることもあってか、本体、特に背面の金属部分がある程度暖かくなります。ただし持って不快なほどの暖かさではありません。
逆に言うと、SoCなどの廃熱処理が上手くいっていることの証かもしれません。背面のアルミ削り出しの外装に上手く熱が逃げているのだと思います。
その後各種アプリのアップデートなどを行なったあとで、ストレージの状況はこのようになりました。
液晶の表示
VAIO Phone Bizの液晶は5.5型でフルHD解像度のものが搭載されています。他のWindows 10スマホよりも高解像度でドット密度も高い液晶となっていますが、通常の使用距離では表示品質に差はほとんど感じません。文字の表示なども十分にキレイです。
光沢液晶となっているせいもあり発色はかなり美しい液晶です。色の偏りもほとんど感じられません。
液晶のバックライトの明るさは、VAIO Phone Bizでは自動調節のままで明るい場所でも暗い場所でもほとんど不満のない明るさに調節してくれます。
タッチパネルの反応
やはりSoCにSnapdragon 617を採用しているだけのことはあり、タッチパネルの操作には非常に敏感かつスムーズに反応してくれます。画面描画にも余裕があるようで、スクロールなどもかなりなめらかな操作感です。
また、ここまでのWindows 10 Mobileのアップデートで、タッチパネル操作に関するチューニングが入ったのかもしれません。以前Windows 10 Mobile端末で感じたスクロールスピードの不自然さがあまり気にならなくなりました。
はじくようなフリック操作を行なった場合のスクロールスピードの「減速感」が薄れている気がします。
アプリ操作の体感速度
アプリの操作感はとても良く、いわゆる「サクサク」動いてくれる感触です。起動も速く、起動後の操作もとてもスムーズにストレスなく行えます。
マップアプリでの地図のスクロールもとてもスムーズ。やはりアプリが良く反応しすぎて、データのダウンロード速度が逆に気になってしまう状態になります。
また、エクスプローラなどからOneDriveにアクセスする場合のレスポンスが良いのも好感触です。メインメモリの余裕がある分が効いているのかもしれません。
Windows 10スマホを本格的に活用する際にはOneDriveとの連携は必須の要素ですので、この部分がスムーズに動いてくれると色々なシーンでのストレスが小さくなります。
スタート画面、ロック画面とアプリ一覧
VAIO Phne Bizのスタート画面はこちらです。アクセントカラーはWindows 10 Mobileの標準と思われる青になっています。
ロック画面はこちら。やはり色々なところにこだわった機種だけあって専用の壁紙が準備されています。
プリインストールのアプリの一覧はこちらになります。
公式には未サポートですが、実はVAIO Phone BizにはSIMカードが2つ挿入できるようになっています。このために、電話アプリとメッセージングアプリが両方のSIMに対応するもの2セット分準備されているところが特徴的です。
ベンチマークと実際の操作感
今回のレビューはベンチマークにAndroidスマホなどでは標準的なアプリになりつつある「AnTuTuベンチv6」を使ってみました。
結果は以下の通りとなりました。比較のため、SoCにSnapdragon 810を搭載している手持ちのXperia Z5のデータも載せておきます。
総合性能の差はかなりのものがありますがCPU性能ではあまり大きな開きはなくなっています。CPU部の最大クロックがXperia Z5は2GHz、VAIO Phone Bizが1.5GHzとなっていますので、その差がほぼ反映された形にも見えます。
ただ、グラフィック性能の特に3Dの性能には大きな開きがあり、本格的にポリゴンを使ったゲームなどでは使用感にはっきりした差が出るものと思われます。
スマートフォンの一般的な操作においてはVAIO Phone Bizの操作感は非常に優れていて、上位のSoCを搭載したAndroidスマホと全く遜色がない、と言っていいと思います。スクロールなどもいわゆる「ぬるぬる」動く形で、とてもなめらかなものが実現できています。
アプリやOSの操作でも、わずかな待ちの間が発生することがとても少なくなっています。
カメラの画質
他のWindows 10スマホ同様にVAIO Phone Bizも標準搭載のカメラアプリは、Windows 10 Mobile標準のものが採用されています。
このアプリの機能面は必要最低限のものではありますが、カメラ操作でしたいことは一通りカバーされていて、インタフェースも思いの外洗練された使いやすいアプリになっています。
ただ写真の画質面ではやはりちょっと残念な仕上がりになります。
VAIO Phone Bizのカメラアプリのチューニングでは、輪郭強調の強度は適切でリンギング(偽輪郭)はほとんど見受けられません。
またノイズ感の少ない画像にはなっているのですが、ノイズを消す処理(NR:ノイズリダクション)を強烈にかかり過ぎていて、コンクリート打ちっ放しの壁など、細かな表面の質感のある被写体がべったりと塗りつぶされるような表現になってしまいます。いわゆる「絵画調」の写真の仕上がりになります。
また、青空がたくさん画面を占めるような構図を取るとオートホワイトバランスが不安定になり、画面全体がマゼンタ系に色が転ぶケースもまれにあります。
カメラのNRなどの撮影のチューニング用のパラメータが調整できるのであれば、もう少しNRを弱めにすれば出力される写真の雰囲気はガラッと変わりそうに思います。今は、ちょっともったいない写真の仕上がりになっています。
イメージセンサー自体の素性はもう少し画質面で攻めても大丈夫そうなポテンシャルはありそうに見えますので、きちんと画質を追い込むとある程度「作品作り」にも使えそうなカメラに仕上がるかもしれません。
ただ解像度自体は十分でメモなどには便利に利用できますし、ブログやSNSに縮小した画像を載せる場合には十分な画質があります。
出力される写真の解像度は、縦横比が16:9の場合には4192 x 2356ドット、縦横比が4:3だと4160 x 3120ドットになります。
Continuum(コンティニュアム)
VAIO Phone BizはMiracastによる携帯電話向けContinuumに対応したスマートフォンです。Miracastレシーバと適当なディスプレイを外部に準備することで、外部ディスプレイ側にパソコン版Windows 10のデスクトップ的な画面を表示することが出来ます。
テストには各所で推奨されている5GHz帯の電波を使うレシーバではなく、2.4GHz帯の電波専用の安価で性能面でも低めと思われるMiracastレシーバを使用してみました。ですが筆者の環境では接続自体も非常に安定していて、問題なく表示が行えます。
ただMiracastの方式上、表示にはどうしても遅延が発生します。このため外部ディスプレイ側に表示したデスクトップ画面の操作をマウスなどを使って行なうには、どうしてもある程度のストレスはあります。
この遅延も以前NuAns NEOでContinuumを試した時よりも若干小さくなったような雰囲気があります。ポインタの細かな動きをあまり必要としない、タイルからのアプリの起動などは比較的普通に行える感触です。
Continuumは画面の情報を無線LANの電波を使って送信する方式のため、無線LANの電波が大量に飛びかう中ではどうしても表示は安定しなくなります。接続を行なう際の周りの電波のコンディションによっても使用感が異なってくるはずです。
このため単純にはシステムに改善があったかどうかは判断がしにくくなっています。
それでも著者の携帯電話向けContinuumの印象としては、比較的簡単なテキストの入力や、書式にあまりこだわらないWORD文書の作成などには十分に役立ちそうだ、というものです。
多くを求めすぎなければ、今のレベルでも役に立つ機能ではないかと思います。
その他気づいた点
最近のスマートフォンは多くの機種がそうなのですが、VAIO Phone Bizも外部スピーカーの音質がかなり良くなっています。背面に付いている関係で、画面を見ながら音を聞くとボリュームがあまり大きく感じられない部分はありますが、音割れもあまり感じられず音質もなかなかです。
人の声がきちんと同じ人と分かる聞こえ方をする、これは意外と大変なことのようで、安いパソコンなどでは別人の声に聞こえるスピーカーもあったりしますが、VAIO Phone Bizではそんなことも少なく、最初に音を聞いた時にちょっとした驚きがありました。
あとは5型と5.5型、スペック上は1割の違いですが、やはり画面は大きく広く感じます。動画を視聴したり電子書籍を閲覧するにはいいサイズ感です。
まとめ
VAIO Phone Bizはほとんどの人が初めてこの機種を見た時には、素直にカッコイイ、と思える外観を実現できていると思います。
アルミ削り出しの梨地仕上げの筐体にレーザー刻印で刻まれたVAIOのロゴ。カメラのレンズ面の出っ張りがなくフラットに仕上げられた裏面など、非常に高級感がある上に、確実に他のスマートフォンとは差別化が出来ている外観を実現しています。
持つこと自体がうれしい端末という意味では、他社のハイエンドスマホを凌駕する部分も確実にあると思います。
使い勝手の面でもSnapdragon 617の実現するスムーズな使用感はとても良好で、普段使いには十分すぎる操作感・性能です。OS自体もWindows系のパソコンを使ったことがある人には、むしろ他のスマートフォンOSよりも取っつきやすい出来になっているかもしれません。
標準アプリのみでも一般的な用途はカバーできるものが揃っており、スマートフォンならではの機能にあまり依存していない人であれば、もう十分にWindows 10スマホも選択肢の一つに入りうる実力はあると思います。
そうなってくるとやはり一般の人向けの端末としては、アプリの少なさがネックとなってくるのでしょう。
マイクロソフトでは、PCでもスマートフォンでも同じアプリを動かせるユニバーサルアプリの仕組みを開発者にもかなり一生懸命プッシュしていますが、なかなかアプリの数の増加にはつながっていないようです。
この部分は、スマートフォン本体とアプリとで卵が先かニワトリが先かの、新しいプラットフォームでは必ず問題となるポイントです。恐らくある一定数以上、Windows 10スマホが使われるようになると、一気にアプリ市場も盛り上がりを見せるのだと思います。
そういった現状も考えると、まずはビジネスユーザをターゲットに据えたVAIO Phone Bizのアプローチが正しいのだと思います。
Windows 10 Mobileにはフル機能版ではないとは言え、パワーポイントまで含めたOfficeスイートが標準搭載されていて、ビジネスユースにはむしろ最適とも言えるOS/スマートフォンに仕上がっているのですから。