ドスパラ超高コスパマシン「THIRDWAVE F-14IC」詳細レビュー
先日ドスパラで取り扱っている「6万円で手に入る」スタンダードノートPCを入手できました。
メジャーメーカー製品の標準価格だと、この価格帯なら搭載するCPUはCeleronやPentiumクラスが採用されているはずです。そしてメインメモリや内蔵するストレージはミニマムな水準に限定されるはず。ですがドスパラの「THIRDWAVE F-14IC」はひと味もふた味も違います。
メインマシンとしても十分通用するかなりリッチなスペックを実現しつつ手に入れやすい価格の、「最強コスパ」を実現した製品です。
まず最初にこのマシンの特徴を箇条書きでまとめておきましょう。
- CPU性能はデスクトップ向け第4世代Core i5より高い
- 上質なキーボード
- 良好なディスプレイの表示品質
- 薄く軽い
- スピーカーの音質はやや残念
- 文句なしの最強コスパマシン
この記事ではドスパラのTHIRDWAVE F-14ICをじっくりレビューします。
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目次
THIRDWAVE F-14ICのスペックを簡単におさらい
まずはこのパソコンのスペックをまとめておきます。
搭載しているCPUは第10世代CoreプロセッサファミリのCore i5-1035G1。
TDPは15Wです。
インテルのノートパソコン向け第10世代Coreプロセッサには2つ系統があって、14nmプロセス製造でデスクトップ向けの同世代のCPUとコアの設計を共用するシリーズ。
もう一つはノートPC専用で新しいCPUのマイクロアーキテクチャを採用した「IceLake」と呼ばれるシリーズです。
THIRDWAVE F-14ICが搭載しているのは後者。マイクロアーキテクチャが改善されていてクロックあたりの性能が向上しています。また、インテルの10nmの製造プロセスが使われています。
4コア8スレッド対応のCPU部でベースクロックは1GHz。ブースト時には最大3.6GHzで動作します。
組み合わされている統合GPUはインテルHDグラフィクスの最新世代。規模はこのシリーズのCPUとしては一番小さなモノですが、それでも48EU(384SP相当)のものを積んでいます。
メインメモリはちょっと驚く16GBを搭載。
しっかりデュアルチャンネルアクセスが可能な構成です。
内蔵SSDはNVMe対応のものを256GB搭載と、こちらも実用性が高いスペックになっています。
搭載するUSBポートは全部で4つ。Type-A形状のものが2つ、Type-C形状のものが2つとなっています。すべてUSB3.2Gen1対応。
また、Type-C形状のポートはどちらもUSB PD規格の電源入力、映像出力に対応しています。
電源ボタンには指紋センサーが内蔵されていて、Windows Helloによる生体認証が行えます。
開封から本体のファーストインプレッション
THIRDWAVE F-14ICはパッケージも同梱される内容物も極めてシンプル。無駄なものが一切ないのは好感度高いですね。
内箱はこんな感じ。
同梱品は少しだけの紙のドキュメント類とACアダプタのみで、本体も天板に一切ロゴすらない極めてシンプルなデザイン。
ちなみにACアダプタはかなり本格的にUSB PD規格に準拠していて、最大20V 3.25Aの65W出力が可能です。結構な高出力品にもかかわらず軽量コンパクトにまとめられています。
マイクロソフトオフィス互換ソフトがプリインストールされた状態で出荷されていますが、紙のマニュアルは同梱されません。マニュアルはネットで見ることになります。
電源ボタンは1プッシュ起動ではなく数秒押し続けると反応するタイプ。
電源のインジケータはちょっと分りにくいのですが、Enterキーの左上隅の白丸がその役目を果たしています。
ブートローダの処理は特別高速ではありませんがOS自体の起動が高速化しているので起動時の待ち時間は短くなっています。
初期設定はコルタナのナレーション付きで分りやすくなっていますが、これ何度聞いても新鮮な感じがします。
手順自体はいつものWindows 10初期設定で何の問題もなく初期画面まで到達できました。
外観とインタフェース
本体のフットプリントはA4用紙より幅が2cm程度長いぐらいのサイズ感です。
天面にはロゴ等も一切なしのシンプルさを極めたようなデザイン。
わずかに暗めのシルバー塗装で目立たない落ち着いた作りです。
厚みは15mm程度とかなり薄く、持ち運びはかなり楽そう。
ちょっとした気の利いた工夫(?)として、背面のゴム足は閉じて持ち運ぶ際の「指掛かり」とすることを考えた形状になっているのではないかと思います。4本足じゃなくて2本横に長いカタチの足になっているのです。実際、いい感じで滑り止めになりますよ。
重量は1.2kgでサイズ感とのバランスから見た目より少し軽く感じる程度。ですが、ACアダプタが軽量なのともあわせ、持ち運びは苦労しなさそうです。
液晶部はヒンジの工夫で下端が本体下に回り込むようにして奥側がチルトアップ、キーボード面に自然に角度が付くタイプです。タイプ感と冷却面などにメリットがありますね。
液晶面はかなりの狭額縁タイプ。
キーボードはフルピッチで主要キーが基本すべて同サイズになっている上に、不自然な配列が一切ない優れものです。
USBポートは本体左側にType-A形状のものが1つ、
右側にType-A 1つとType-Cが2つ。右側にはマイクロSDカードスロットもあります。
電源はUSB PDで供給ですので電源専用のポートはありません。
実使用感の詳細
ではTHIRDWAVE F-14ICを少し使い込んでみての感触を以下で具体的にまとめていきます。
最初のサインインとデフォルト設定など
今のWindows 10の初期設定そのものの中身で特別に詰まるような所は一切ありません。
ちょっと「お」という感じがあったのは初期設定の延長でWindows 11のレコメンドがあったことでしょうか。とりあえずはスキップして10でスタートしています。
その他特別に詰まるところもなく、スムーズにデスクトップまでたどり着くことが出来ます。
液晶の表示品質
本機を少し使ってみただけで液晶の表示品質がなかなか良好なことに気づくと思います。
かなりおトクな価格のスタンダードノートPCの液晶パネルであるにもかかわらず、sRGBのカラースペースに対する色のカバー率は結構高そうな感触です。なかなか鮮やかな色が出ています。
何より色の偏りが非常に少ないニュートラルな表現が出来ていることが気に入りました。
視野角が広いIPS液晶を使っていますがこのタイプとしてはコントラストもしっかり出せている感じで、映像コンテンツはかなり見栄えがします。
ドスパラのこの製品のユーザーレビュー欄には「残像感が多くてダメ」と言うレビューがあったのでちょっと「おや?」と思っていたのですが、実機を手にして普通の動画を再生してみるとスタンダードノートPCとしてはごくごく普通の残像感でした。特別にこの製品がどうこう、と言うレベルではないですね。
より小さな残像感が必要ならば、高fps駆動の液晶を採用したゲーミングノートPCとか有機ELパネルを搭載した製品を選択しないとダメでしょう。
ノングレア処理も上手く、「総じて液晶パネルの表示品質はかなり良好」と言えます。
キーボードのタッチ
薄型ノートPCのためキーボードのストロークは深くすることが出来ません。その中で気持ちの良いタッチ感と疲れにくいタイプ感を作り出すために各メーカー腐心しているはずです。
このマシンもキーストロークは公称1.2mmと非常に浅いものです。が、こちらは購入前の予想に反してかなり良好なタイプ感が実現されていて驚きました。
タッチは比較的軽めですが、押圧がピークになる場所を越えたところでの押圧の抜き方が絶妙で、キーのクリック感を上手く演出しています。「タイプした感」がしっかり感じられるキータッチですね。
キートップのぐらつきもわずか。薄型ノートPCとしてはキースイッチのベースのたわみもかなり頑張って抑えている感じです。
さらにちょっと驚くのはキー配列が極めてまっとうなことです。
下手なデスクトップパソコンのキーボードよりも整った形状になっているのですよ。基本すべての主要キーが同じサイズを確保できていて、おかしな配列のキーが一切ありません。
良好なキータッチと相まって「タイピングのしやすさは特筆できるレベル」です。
予想外のキーボードの良さにすごく得をした感じがします。
スピーカーの音質
ここだけはこのマシン唯一の弱点と言っていいポイントかもしれません。
スピーカーの音質はかなり残念なレベルです。
価格帯がかなり違いはしますが、スマートフォンのXperia 1 IIIのスピーカーよりも数段音のクリアさで劣ります。
すべての音が「かすれる」表現になってしまって、ビデオ会議の音声再生でも発言を聞き間違える可能性があるかもしれません。
ボリュームはそこそこ大きく出来ますが、その代わり音は割れます。
内蔵スピーカーは「とりあえず本体のみで音出しも出来る」ぐらいに考えて、用途は限定した方がいいかもしれません。
バッテリーの持ち具合
バッテリーライフは公称13時間以上の駆動が可能なことになっています。
手元ではAmazonプライムビデオの動画作品をWi-Fi経由で2時間連続再生させてバッテリーの減り具合を見てみました。
再生はEdgeを使ってフル画面表示。画面の明るさは40%、スピーカーボリュームも40%の設定にしました。また、ネットにはWi-Fi 5の2ストリーム(リンクアップ速度867Mbps)で接続しています。
この条件のもとの動画2時間の再生でバッテリー消費は20%ほど。かなり消費は少なめに感じます。
キーボード操作、マウス操作は一切行なっていないので仕事をする場合の消費電力とはパターンが大きく異なると思いますが、それでもなかなかの省エネが実現できている感触です。
ちなみに画面の明るさは40%の設定でも、室内であれば十分に作業が可能な明るさがあります。
ファンノイズと熱
ベンチマークソフト実行やバックグラウンドでセキュリティソフトの自動スキャン、Windows Updateなどが動くと冷却ファンの回転数が上がってすぐにそれがわかります。その程度には音が出ます。
ただ音質はあまり耳障りなものではなく、他のノートPCとも共通する音質のものですね。全負荷時にファンがフル回転するとある程度の音圧にはなりますが、普通のオフィス程度なら問題になるようなレベルではないでしょう。
音には金属音的な耳触りな成分が混じらないため、高音寄りの音質でもあまり気になるユーザーはいないのではないかと思います。
ファンの回転数・ノイズはアナログ的に滑らかに変化するのではなく、少なめの段数でカクっと上がる感じでちょっと面白い制御に見えました。
クーリングファンからの排気の吹き出し口はヒンジのそば、本体後ろ側の液晶部分の下にあります。このためフル稼働中も温かい排気がユーザーにかかったりすることはありません。排気で温かくなるポイントはキーボード面一番奥。温度も大したことはなく、よほど暑い環境でない限り不快に感じることもないでしょう。
負荷がかかったときの本体の熱の持ち方も非常に穏やかです。
ベンチマーク
つづいて性能面をじっくり確認してみましょう。
各種ベンチマーク結果を見ます。
SSDの性能
THIRDWAVE F-14ICに内蔵されているSSDはPCIe接続のNVMe対応のもの。容量は256GBで廉価版の製品が使われていると思われます。
速度的にPCIe3.0のx4接続になっています。インタフェースの帯域を使い切れている数字ではありませんが、それでもSATA3接続のSSDとは比較にならない性能が出ています。
ランダムアクセス性能も高いので、この辺りの性能がこのマシンの使い勝手の良さを下支えしています。
CPUベンチマーク
続いてCPU性能をCINEBENCH R23のスコアで見てみます。
THIRDWAVE F-14ICは第10世代のCoreプロセッサ、Core i5-1035G1を採用しています。
スコアの方はマルチコアで3284pts、シングルコアで1107ptsとなりました。
ちなみに著者のメインマシンであるデスクトップPCのCPU、Core i7-11700KFで測定したデータはマルチコアのスコアが13124pts、シングルコアのスコアが1521ptsです。
シングルコアで動作時の最高クロックがCore i5-1035G1のほうは3.6GHz、Core i7-11700KFの方が継続的に出せるのが4.9GHz。この比率でザックリ換算してみるとどちらもシングルスレッド性能はほとんど一緒の数字になります。(Core i5-1035G1のスコアを4.9GHz換算にすると1507pts)
また、マルチコアのスコアもCore i7-11700KFの方が8コアCPUである点、動作クロックの違いを勘案して換算してみた場合にはほとんど同レベルのスコアになります。
IceLakeシリーズのCPUであるCore i5-1035G1は第11世代のデスクトップPC向けCoreプロセッサと同等のクロックあたり性能を持つと考えて良さそうです。
さすがに最新の第12世代のCoreプロセッサには及びませんが、デスクトップ向けの第10世代以前のCPUと比べると1ランク高い実効効率を持つことが分ります。
つまりCPU性能自体は2世代前のものではなくほぼ1世代分のハンデしかない、ということになります。
ちなみに第4世代のデスクトップPC向けCPU、Core i5-4570のCINEBENCH R23のスコアは3000ポイント弱に留まるようで、8年ほど前のデスクトップのミドルハイクラスのCPU性能が今やTDP 15WのスタンダードノートPCに落ちてきている、と言うことになります。
CPUだけで見ると電力効率は実に5倍以上。
しばらく前のPCを延命させるか最新のPCに乗り換えるかの目安の一つにしてみてください。
CPUベンチマークで一つちょっと気になったのは、Windows 10で実行したCINEBENCH R23のスコアよりもWindows 11環境で実行した結果の方が少し低い数値を示したことです。
率にして数%程度ですが測定誤差と言うにはちょっと大きめ。11側ではCPUドライバの最適化が終わっていないとか、バックグラウンドタスクで少し余分にCPUを食っている、などの違いがあるのかもしれません。
GPUベンチマークとゲーム
続いて統合GPUの性能をチェックします。
Core i5-1035G1の統合GPUはIceLakeシリーズのCPUとしては一番規模が小さなもので、48EU、384SP相当のものとなっています。統合GPUの世代は1つ前のものでまだインテルUHDグラフィクスです。
ドラクエXベンチマークを解像度フルHD、最高画質で実行した結果がこちら。
4532ポイントで「普通」評価でした。
実行中のベンチマークの画面を見たところ、一部キャラクターが多いシーンでフレームレートが少し足りない感じがありましたが、特別引っかかる部分などはありませんでした。
続いて3DMarkのNight Raidを実行してみました。
さすがにこの規模の統合GPUにFire Strikeなどは荷が重すぎますから。
結果の方は以下の通りで「Excellent」の評価となっています。
ちなみにこちらのテストでもCPU性能の結果がWindows 10時よりも数%低下しています。
ただ、「AAA級」などと呼ばれるゲームをストレスなく遊ぶには少々パワーは足りないようです。
著者がプレイしている非常に古いタイトルのMMORPGなどなら、全く問題なく動作できる能力はありますね。
スタンダードなノートPCだからゲームが出来ない、という単純なお話ではなく、ゲームタイトルの描画負荷次第でこのクラスのパソコンでも遊べるゲームはいくつもあるのです。
重いアプリの操作感など
手元にあるタイトルの中で動作が重く感じられるケースがそれなりにあるソフトとして、キヤノン謹製のデジタルカメラの写真の現像・フォトレタッチを行なうソフトを試してみました。
ものはDigital Photo Professionalのバージョン4。写真をドットバイドット表示させるときなどに、CPUパワーの差が如実に表れやすいタイトルです。
いくつかのCPUを食うであろうタスクを実行してみましたがいずれの動作もスムーズでそれなりの速度が出ます。
現像処理もなかなか速いので撮影に一緒に持ち出して現地で詳細の確認を行なう、といった用途にも使えそうです。
もちろんドットバイドット表示での写真のスクロールも非常にスムーズ。
使い勝手は上々です。
THIRDWAVE F-14ICの液晶の色合いのニュートラルさとも合わせ、「厳密なカラーマッチングを必要としないなら」という条件はつくものの、十分写真作成にも役立つ性能があるといえそうです。
まとめ
ドスパラのTHIRDWAVE F-14ICは14型フルHD液晶を搭載したモバイルノートPCです。機能・性能的にデスクノートとしても十分に機能出来る内容を持っています。
ほとんどすべての要素がそつなくかなり高いレベルでまとめてあり、使用感は非常に良い製品になっています。性能的にもちょっと前のデスクトップPCを置き換えられるレベルのものを持っており、とても快適に利用できています。
正直、この中身を持つ製品が6万円で入手できるというのはかなりのインパクトがあります。可能ならば継続販売も考えて欲しい良パソコンです。