Continuum国内初対応のWindows 10スマホ。トリニティ「NuAns NEO」徹底レビュー
実はWindows 10 Mobile搭載スマートフォンでは、日本が一番の盛り上がりを見せています。今までのスマートフォン開発・販売の大手ではないメーカーが数多く参入し、成熟期を迎えつつあることもあって、やや沈滞したムードの漂い始めたスマートフォン市場の中では、異色のジャンルとなっています。
そんな中でも、もっとも「変わった」存在のスマートフォンがNuAns NEOと言えるかもしれません。
発売元のトリニティは、基本的にはスマートフォン向けのアクセサリ・周辺機器を販売してきた会社で、スマートフォン本体の開発は今回が初めてとなる会社です。ですがそういった会社であるがゆえに、独特のスマートなデザインセンスを持ち、それがNuAns NEOにも活かされています。
また、NuAns NEOは日本国内で使用可能なWindows 10スマートフォンとしては初めて、Continuum for Phonesを実現した端末としても注目されています。
さて、そんな中著者もNuAns NEOのほぼ初回ロットと思われる製品を入手することができました。少し使ってきていろいろな部分も見えてきましたので、早速レポートしてみたいと思います。
目次
スペックおさらい
NuAns NEOは、ミドルクラスのスマートフォンでは一般的なスペックとなっている、5型のHD解像度(1280 x 720ドット)のIPS液晶を搭載しています。3大キャリアが大々的に扱っているハイエンドクラスのスマートフォンの解像度のフルHDには及びませんが、5型程度の画面でHD解像度があれば通常使っている範囲でドットの存在が気になることはまずありません。
NuAns NEOよりも先に発売されたWindows 10スマホはエントリークラスのSoCが採用されていましたが、NuAns NEOでは一クラス上の、純粋なCPU性能だけを見ればハイエンドクラスにも迫る性能を持つSnapdragon 617を採用しています。このSoCのCPU部はオクタコア(8コア)となっていて、最高1.5GHzで動作します。
サイズは5型液晶を搭載するスマートフォンとしてはやや大きめ。特に厚さは今主流となっているスマートフォンよりもかなり厚くなっています。サイズは、141mm x 74.2mm x 11.3mm、重さは約150gです。
メインメモリは2GBと余裕のあるスペック。内蔵ストレージは16GBとなっています。マイクロSDカードスロットを搭載し、128GBまでのSDXCカードの動作が保証されています。SDカードの高速インタフェース規格であるUHS-Iにも対応しているのも、この端末のこだわりかもしれません。
LTEの電波はバンド1,3,8,19,28に対応し、通信速度はカテゴリ4までの対応で、規格上の論理的な最大通信速度は150Mbpsとなります。
リアカメラには裏面照射型の1300万画素センサーを採用。F2.0と明るい28mm相当の広角レンズが使われています。フロントカメラは、やはり裏面照射型で500万画素のものを採用。こちらは自撮りが楽なように、より広角な24mm相当のレンズが使われます。
バッテリーは取り外しは不可ですが、3350mAhと大きめのものを搭載。また、背面パネルが上下に分かれていて、材質や色の異なる様々なパネルを取り付けることで、端末の雰囲気をガラッと変えられることも大きな特徴となっています。
手にしてのファーストインプレッション
輸送用の外箱から取り出すと、まずそのパッケージのユニークさに思わず頬が緩みます。本体と裏面のカバーが楕円形の断面を持つ分厚い頑丈な紙製のパッケージに収められています。
このパッケージは、中身を取り出した後は貯金箱としても使えるそうです。
同梱品はとてもシンプルで、ACアダプタは付属していません。ただ、NuAns NEOが充電コネクタ、インタフェースポートに採用した、USB Type-C形状に対応するUSBケーブルが付属するのは親切です。USBのAタイプのコネクタ出力の、一般的なスマートフォン用充電器に接続が可能となっています。
背面カバーは今回は上下とも黒のスムーズのNuAns NEO TWOTONE CORE(ネオ ツートーン コア)本体セットを選択しましたが、独特の柔らかく暖かい手触りがいい感じです。本体が冷えていても手にしたときに冷たさを感じません。
横幅と厚みは、著者普段使いのXperia Z5よりもボリュームがあるのですが、両サイドがキレイにラウンドしているせいか、持ちにくさなどは全く感じません。
NuAns NEOはすこしだけ残念ですが、ホームボタンなどは液晶パネル側に表示されるタイプで、液晶の表示エリアを使ってしまいます。実質の表示エリアが狭まる形です。ただ、Android5.0あたりよりも、アプリ利用時にはホームボタンが隠れてくれるケースが多く、実使用の際には画面の狭さを感じにくい配慮はされています。
各種コネクタなどの外観
液晶側の額縁も黒。背面パネルも黒を選択していますので一体感のあるデザインです。また、液晶保護ガラスの両端はわずかにラウンドして本体のRにつながる形になっていることも、一体感を増す要因になっています。
ただ、この形状のため、保護フィルムを貼るのはちょっと大変かもしれません。
USB Type-Cコネクタ、ヘッドフォンジャック、スピーカーの穴は全部本体下側にあります。穴の位置を、横一線に揃えたのもメーカーのこだわりだそうです。
また、本体向かって右側に独立したボリュームの+とーのボタン、電源ボタンがあります。
何も刻印も表示もありませんが、すぐに何の機能を持つボタンか分かります。押し間違いもありません。
電源投入から最初のサインインまで
初回起動までは、割と重い処理が動き、場合によってはそれなりの量のWindows Updateがかかることもありますので、ACアダプタを接続した状態で初期設定を行ないます。
付属のUSB Type-Cへの変換ケーブルは、表面にファブリックの被覆のある質の良いものが使われているのですが、中のケーブル自体が少し堅く、コネクタ部分もストレート形状ですので、接続した状態で机の上に置く場合には、端末下側に少し余分なスペースが必要になります。もう少しケーブルが柔らかければ最高なのですが。
パソコン用Windows 10と同じ雰囲気の画面を見ながら初期設定を進めます。
比較的多くのWinodws Updateが反映された状態での出荷となっているようで、初期設定は割とテンポ良く進みます。あとは、搭載されているSoCの性能の高さも効いていると思われます。
また、初期設定中の本体の熱の持ち方はかなり穏やかで、ほんのりと暖かくなる程度です。クアルコムの性能が高い方の初物Snapdragonは、どのメーカーも発熱対策で苦しめられるとのジンクスがありますが、この端末ではそのあたりは上手く処理されているようです。
その後アプリの更新、Office Mobileの実体の展開などを行なった状態で、ストレージの使用状況はこのようになりました。
NuAns NEOには16GBのマイクロSDカードも最初から入れてみていますので、本体のストレージと並んでSDカードの状態も表示されています。他のスマートフォンである程度利用したSDカードの使い回しでしたので、初期状態で既にある程度容量を使っています。
アプリの更新はシステムに任せて一気に更新を走らせると「渋滞」のような状況になって更新処理がスタックすることがありますので、今回も全部の更新を一旦止めた後、手動で2つずつ更新させています。
ありがたいことにWindows 10 Mobileでは、アプリの更新は完全に2つ同時並行で実行してくれます。
液晶の表示
NuAns NEOも液晶はHD解像度のものが使われていますが、通常使う範囲ではドットの存在を意識することはありません。十分に高密度でキレイな表示が行えます。PC版のWindows 10で問題にされがちなフォントの汚さも、ほとんど感じることはありません。
色の再現はかなり鮮やかです。色の偏りはほぼなさそうで、かなりニュートラルな表示が出来ています。
バックライトの明るさ調節は、自動のままでほぼどのシチュエーションでも適当と思われる明るさになります。アクションセンターのボタンからより明るくする設定も行えますが、こちらは思いの外明るくならない印象です。
タッチパネルの反応
NuAns NEOは最初に画面にタッチした瞬間から、Snapdragon 210や410搭載機とは反応が違うことが分かります。それぐらいに非常にスムーズに、いわゆる「ぬるぬる」動作する感触があります。
Windows 10 Mobileはとても軽いOSで、Snapdragon 210でも十分なレスポンスが実現出来ていますが、NuAns NEOではそれらの端末よりも、1ランク上の操作感を実現できていると言えるでしょう。
ただ、この端末でもやはりWindows 10特有のタッチパネルの反応の癖は共通して残っています。通常操作の指先の動作への反応はきわめて良好なのですが、はじくようなフリック操作をした時にスクロールスピードが落ちるような感じの違和感はあります。
その点以外は非常に優秀な操作感が実現できています。
アプリ操作の体感速度
アプリの起動速度もNuAns NEOではかなり速くなっているようです。この端末を使ってみて初めて、エントリークラスのSoCを使った端末は、実はアプリ起動などにもほんの少しの間があったんだ、と気づくことになりました。
マップアプリでの地図のスクロールもかなりスムーズに動作します。
地図の描画が間に合わない部分も出ますが、それはハードウェアの性能不足ではなくデータの転送が間に合っていないことが原因のようです。むしろ、スムーズに動きすぎてどんどんスクロールさせてしまうので、地図のデータの転送が間に合わなくなる、といった状況を逆に招いてしまうようです。
OneDriveのようにクラウド側にアクセスを行なうアプリも、起動が一段速いです。起動してからの操作感は変化ありませんが、アプリの切り替えなどもわずかですがテンポ良く行えます。
NuAns NEOの使用感であれば、通常利用していても、操作感に関して何らかのエクスキューズを探す必要は一切ないと言っても良いと思います。
スタート画面、ロック画面とアプリの一覧
NuAns NEOの初期状態のスタート画面はこちらになります。アクセントカラーは一般的な青になっています。
ロック画面はさすがにデザインにこだわる会社だけあり、独自の、センスが良くとてもシンプルな画面を用意しています。
ロック解除のためにスワイプすると、動いていくのは日付、時間の表示部分だけ。ちょっぴりカッコイイギミックになっています。
プリインストールアプリの一覧はこちらになります。パソコン版のWindows 10を触ったことがある方なら、見慣れた名前が並んでいると思います。
ベンチマークと実際の操作感
ベンチマークには、Googleの開発しているWebブラウザのJavaScript実行エンジンの性能を測るOctane2.0を使ってみました。Webブラウザの性能を見るためのベンチマークアプリケーションですので、スマートフォンそのものの性能が直接見える訳ではありませんが、ある程度の性能の目安になってくれます。
結果は次のような数字となりました。
4000以上のスコアとなり、Snapdragon 410採用のスマートフォンの4割増しの数字が出ています。
さすがに現行のほぼハイエンドとなるSnapdragon 810搭載のAndroidスマホと比べると半分程度のスコアにとどまりますが、使用感ではハイエンド機に迫る操作感が実現出来ています。
Windows 10 Mobileにそういった機能があるのかどうかは分かりませんが、下位のSoC搭載機とは画面描画の秒あたりのコマ数が違うんじゃないか?という印象を持つぐらいの動作や画面スクロールのスムーズさが実現出来ていることが印象的です。
本当に最初の1タッチ目から「おっ!」と思わせてくれる動作感の良さが感じられました。
カメラの画質
NuAns NEOでもカメラアプリは、Windows 10 Mobile標準のものが採用されています。操作性がほかの端末と共通なのはメリットとなりますが、NuAns NEOでは残念ながらこのアプリがせっかくのカメラ性能の足を引っ張っているような形に見えます。
ここまで強烈なリンギング(偽輪郭)が出る画像は久々に見ました。
アナログ時代のアマチュア向けビデオカメラ以来かもしれません。デジタルカメラになってから、これだけのリンギングが出ているのを見たのは恐らく初めてです。
(電線の縁に白い線がはっきりと描画されている)
また、全般にJPEG形式で写真を記録する際の圧縮率が高すぎる感じです。画像のファイルサイズが多少膨らんでもいいと思いますので、低圧縮率・高画質の保存方法を選べるようになれば、画像の輪郭の周りのジリジリしたノイズは大幅に減らせるのではないかと思います。
青空のグラデーションの部分などを見ると、もう少しノイズリダクションも弱めにかけても大丈夫そうに思います。裏面照射型を採用しているというイメージセンサーの素性はそれほど悪くはなさそうですので、もう少ししっかりしたカメラアプリを開発できれば、出てくる写真の印象は全然変わってくるのではないかと思います。
色の再現性もなかなかよく、
ホワイトバランスも良好、青空のグラデーションもかなり上手く描画されますし、腕時計の金属質感もかなり再現されています。
それだけにカメラアプリが原因と思われる写真の画質の詰めの甘さは、ちょっともったいないですね。
撮影できる画像の解像度は、アスペクト比16:9では4160 x 2340ドットの約970万画素となります。4:3で撮影した場合には、4160 x 3120ドットの約1300万画素、フル解像度の画像となります。
Continuum(コンティニュアム)
NuAns NEOが待望されていた理由の一つは、日本では初めてContinuum for Phonesが利用できることがあります。
この機能は、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンに、外部ディスプレイとキーボード、マウスを接続することで、外部ディスプレイにはPC版のWindows 10にかなり近いデスクトップ画面を表示することができ、その操作をキーボードとマウスを利用して行なうことが出来るようになるものです。
NuAns NEOが搭載するSnapdragon 617ではUSBインタフェースが2.0までの対応となるため、有線接続でのContinuumは利用できず、無線LAN技術を利用するMiracast経由での接続となります。
今回Miracastレシーバには実験の意味も込めて、安価な中国製のドングル「AnyCast M2 Plus」を使用してみました。
結果、ドングルの使用方法が確認できてからは、接続の方はほぼ一発でOK。各種WebメディアなどではContinuum対応をうたう1万円程度の高価なレシーバでないと、接続が安定しないような記述だらけでしたのでちょっと不安があったのですが、実際には、安物のレシーバでもあっけないほど簡単に接続ができてしまいました。
さらに一度接続してしまえば、あとの動作はきわめて安定しています。途中での切断などは一切発生しませんでした。ドングル側に画面の描画で大きな負荷がかかり続けるような操作を行なっていないせいもあるかもしれませんが、全く予想できなかった安定感でした。
この辺りの接続の安定性に関してはMiracastレシーバ側の性能云々と言うよりも、Continuumを使用する場所の電波の環境の影響の方がはるかに大きいようです。使用する場所で2.4GHz帯の無線LANやBluetooth、無線接続のキーボードやマウスが大量に使われているような状況だと、恐らくMiracastの安定稼働はほぼ不可能なのでしょう。
多くのオフィスなどでは無線LANがどんどん使われているでしょうから、そういう観点では、Continnum for Phonesが本領を発揮するのは有線接続の出来るモデルが登場してから、ということになるのかもしれません。
さてMiracastレシーバ側の性能ですが、実際の操作の上での影響はあります。無線で画面のデータを圧縮して飛ばす関係上、画面描画に遅延が生じます。この遅延の幅がレシーバの性能によってかなり変わってくるようです。
今回使用したレシーバでも、通信状態が良好ならばコンマ数秒程度の遅延で収まるようではありますが、より高性能なレシーバで遅延が短く出来るのであれば、その分は使用感の良さに直結するでしょう。
実際コンマ数秒レベルのわずかな遅延でも、マウスによるポインタ操作が非常に難しくなりました。ただ、キーボードからの文字入力、カーソル移動などにはあまり使いにくさを感じませんでしたから、ちょっと不思議な使用感です。
このため、現在のMiracast経由のContinuumでは、簡単な文章作成程度はある程度こなせそうです。また、パワーポイントでの簡単なプレゼンテーションも問題なく行えるでしょう。ですが、ポインタ操作の必要なアプリの利用などでは、かなりのストレスを覚悟する必要があります。
ちなみに、Continuumで外部ディスプレイを使っている間、スマートフォン側の画面はタッチパッドになります。マウスがなくてもポインタ操作が可能です。タップで左クリックも認識してくれます。
その他気がついたところ
NuAns NEOでは外部スピーカの音質がかなり良いようです。Windows 10と同じアラーム音などが、耳触りではない優しい音に聞こえます。音量もかなり大きな音量にまで上げられます。
ヘッドフォン出力の音は非常にボリュームを大きく出来ます。音のバランスも割と良好。変に低音が強調されるといったこともなく、かなりクリアな再生が行えます。
NuAns NEOでもハイレゾ音源のハイレゾクオリティでの再生には対応していないとは思いますが、Groove ミュージックアプリでは24bit/96kHzのハイレゾ音源もそのまま再生が可能でした。
まとめ
何機種かWindows 10 Mobile搭載のスマートフォンを触ってみていると、著者のようにスマートフォンの機能にあまり依存していない人間は、より高機能なAndroidOSやiOS採用スマートフォンじゃなくても全然問題ないんじゃないか、という気になってきます。
もし最初にスマートフォンを選ぶ際にAndroid、iOSのほかにWindows 10 Mobileがあって、その時パソコンにもWindows 10があったなら、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンを選んでいた可能性が高そうです。それぐらいにパソコンのWindows 10操作感との近似性が高く、初めて使う際にもほとんど戸惑うことはなかっただろうと思います。
インスタントメッセンジャー系のアプリも有名どころはそろっていますし、SNS関連もある程度カバーできます。メールやブラウザも概ねOK。さすがに流行のゲームなどはありませんが、そういった機能を求めていないユーザであれば、特に困らないだけ機能はそろっているように思います。
ただ、最近のスマホネイティブな人たち、ネットの世界にはスマートフォンから入ってきて何もかも全てをスマートフォンで、と言ったユーザには、いろんな機能が大幅に足りない状態であるというのは事実でしょう。
そういったニーズに応えるためのストア アプリ充実にはまだまだ時間がかかると思いますので、Windows 10スマホを出しているどのメーカーも、まずはビジネスユーザから普及を図るという戦略をとっているのも妥当なところと言えます。
日本で最初にContinuum for Phonesを実現したNuAns NEOも、開発当初からある程度ビジネスユーザをターゲットにしているだろうことは予測できます。
個人ユーザ向けとしても、スマートフォンのライトユーザ向けとしては既に十分な機能がありますし、パソコン版Windows 10を利用している人にはプラスアルファの様々なメリットがあります。
とても動作が軽くてローエンドSoCでも十分なレスポンスを確保できるWindows 10 Mobileですが、それでもやはりミドルクラスSoCのSnapdragon 617を採用するNuAns NEOは、動作のスムーズさなどで先行した各スマートフォンよりも一段上質な操作感を実現しています。
日本にはあまり存在しなかったミドルレンジのスマートフォンとして、性能面でも価格面でも、NuAns NEOがこれからのこのクラスのスマートフォンのベンチマークとなるでしょう。