遂に登場「WoA」。Snapdragon版Windows 10いよいよ世界へ
HP「ENVY x2」
2016年の開発者向けイベントWinHECで開発が発表されたArm版Windows 10、いよいよそれを搭載したパソコンが世に出る形になります。
Arm版Windows 10で使われるSoC、Snapdragonを開発、販売しているクアルコムの技術者向けイベント「Snapdragon Tech Summit」にて、実動機の展示も含めた形で大々的に発表が行なわれました。
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ローンチ機種はASUSとHPから
ASUS「NovaGo」
Snapdragon搭載Windows 10マシンは、まずはASUSとHPから発売されます。
どちらもSoCには現状のハイエンドチップであるSnapdragon 835を採用。OSのエディションはWindows 10 Sになります。
SnapdragonですからLTEモデムを搭載していて携帯回線経由の常時ネット接続が可能です。キャリア次第とはなりますが、LTEモデム自体は最大1Gbpsでの接続が可能です。
ASUSの機種は13.3型のフルHD液晶を搭載したフリップ型の2in1 PC、「NovaGo」です。
今風のモバイルノートPCとしては特別薄い訳でもなく重量も軽くはないのですが、圧倒的と言えるバッテリー駆動時間22時間を実現します。
ちなみにこれは動画再生を行なっている状態での稼働時間です。
メモリ4GB、ストレージ64GBのエントリーモデルが599ドル、メモリ8GB、ストレージ256GBのモデルが799ドルになります。
HPの「ENVY x2」は、Surface Proのような、タブレット寄りの2in1 PCです。
12.3型のフルHD液晶を搭載して、タブレットモード時には最薄6.9mmの薄さと約712gの軽量さを実現しています。
ワコム方式のスタイラスペンが利用可能です。
動画再生時のバッテリー駆動時間は公称20時間。Windows 10の「モダンスタンバイ」を使うと、なんと700時間ものスタンバイが出来るようになっています。
この驚異的とも言えるバッテリーの持ちがSnapdragon版Windows 10 PCの最大のメリットと言えそうです。
体感性能はATOM以上Core i3以下?
現地の実動機を触ってみた人の感触では、部分的にエミュレーションで動作するWin32アプリの実行速度もそこそこ使い物になる性能が出ているようです。
トータルではATOMを使ったPC以上、Core i3以下ぐらいの体感速度が実現できているようです。
今のATOMはオフィスアプリの利用などではかなり実用的な性能を持っていますから、それを超える操作感が得られるならば、非常に長いバッテリー駆動時間とも合わせかなり高い実用性を備えていると言えそうです。
Snapdragon版Windows 10のOS本体は、もちろんSnapdragonのArmアーキテクチャネイティブのコードで出来ています。またアプリケーションから呼び出される各種ライブラリ(DLL)もネイティブなコードになっています。
このため、アプリケーションによってはWin32アプリでも、かなりの部分がArmネイティブのコードで動くことになり、そのあたりが実用的な性能に結びついているのでしょう。
その代わり、フォトレタッチソフトのフィルタ操作など、たくさんCPUによる直接の演算が必要なケースでは、Win32アプリの実用性はかなり落ちる可能性もありそうです。
今後はArmネイティブなアプリの開発も可能に
2018年以降、ArmアーキテクチャネイティブなWindows 10アプリも開発可能になるようです。
こうなるとWin32アプリ実行で必要となるインテルCPUの機械語のエミュレーションが不要になりますから、アプリの体感速度がグッと上がって数多くのアプリの実用性がより高まることになると思います。
ローンチ時の機種で既に従来のモバイル型パソコンの枠を大きく超えるバッテリー駆動時間を実現していますから、WoA(Windows on Arm)機器の登場で、PCにまた新しい流れが生まれるかもしれません。
ちなみに、Snapdragon 835、メインメモリ4GB、ストレージ64GB、フルHDのディスプレイパネルを搭載したスマートフォンはメーカーなどにもよりますが、6万円〜8万円ぐらいの価格帯に収まると思います。
それを考えると、同様のスペックを載せたWoA PCが599ドルで買えるとなれば、PCは高すぎる、という一部のユーザーの意識も変えるきっかけになるかもしれません。