ドスパラWindows 10スマホ、Diginnos Mobile(デジノスモバイル) DG-W10M徹底レビュー
Diginnos Mobile(デジノスモバイル)DG-W10Mは、サードウェーブデジノスが製造、(パソコンパーツ、BTOパソコンショップの)ドスパラが販売する、Windows 10 Mobile搭載のスマートフォンです。
Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの「発売日競争」では若干後れを取りましたが、他社に先駆けてドスパラ店頭などで実動機の展示を行なったことなどから、むしろ認知度では他機種よりもこちらの方が上かもしれません。
スペックや価格帯的にも、携帯キャリア大手の販売するハイエンド機とは間違いなく一線を画する端末で、かなりシェイプアップしたスペックの端末となっています。
今回はこのDiginnos Mobile DG-W10Mを試用することができましたのでレビューしてみたいと思います。
目次
スペックのおさらい
Diginnos Mobileは最近のスマートフォンでは一般的なサイズの5インチ液晶を搭載しています。解像度はHD解像度(1280 x 720ドット)と、ハイエンドスマホで一般的なフルHD(1920 x 1080ドット)よりも低くはなっていますが、実際の使用シーンで画面のドットを感じることはほぼないでしょう。
CPUなどを統合したSoC(System on Chip)にはクアルコムのSnapdragon 210を採用しています。現行のSnapdragonシリーズではもっとも下位の機種となりますので、操作感にはどのような影響があるか気になるところです。CPU部は最高1.1GHz駆動のクアッドコアとなっています。
サイズは5インチクラスの液晶を採用するスマートフォンとしては一般的なサイズで、5.2インチ液晶を搭載するAndroidスマホのXperia Z5とほぼ同サイズです。大きさは142.5mm x 70.5mm x 9.2mm、重さは約145gです。
メインメモリは1GBとミニマムですが、ストレージは16GBとやや余裕のある構成。マイクロSDカードスロットを搭載していて、SDHC規格に対応します。大容量データを持ち運びたい方は、SDXC規格には対応していない点に注意が必要かもしれません。
LTEの電波帯はバンド1/5/9/19に対応。搭載しているカメラは、リアカメラには800万画素のセンサー、フロントカメラには200万画素のセンサーを採用しています。
バッテリーは取り外し可能なタイプの2300mAhのものを採用しています。
残念ながら防水には対応していませんが、取り外せるカバーに着せ替え用として最初から3色の交換用のものが同梱されているのが特徴的です。
手にしてのファーストインプレッション
Diginnos Mobileのパッケージの箱は小ぶりなものですが、本体の写真が印刷された化粧カバーがつきます。
同梱品はシンプルなものですが、かなり小型のACアダプタ/充電器がセットに入っているのは親切です。一般に販売されているACアダプタの中でもかなり小型のもので軽量ですから、旅行などの際に端末と一緒に持って行くことも全く苦にならないでしょう。また、裏面のカバーが色違いの3つと、液晶保護フィルムまで同梱されています。
サイズは著者が現在使用中のAndroidスマホ、SONYコミュニケーションズのXperia Z5とほぼ同じです。
厚みは若干Diginnos Mobileの方が厚くなっています。
Diginnos Mobileを手に持った時の重量感はXperia Z5とほぼ同じで、今のこのサイズのスマートフォンらしい重量があります。カバーの色によっては軽快感のある外見ですが、重量は特に軽いスマートフォンではありません。
ですが、裏側の角部分が比較的大きなRでラウンドしていますので、実際の厚さよりも薄く感じる端末で持ちやすくなっています。
裏面カバーはいわゆるプラスティッキーな質感でつやもあり、見る角度によっては指紋が目立ちます。ただ、特に空色のカバーでは逆にそのプラスチックっぽさが、いい意味での軽さを演出している感じもあります。
Windows 10 Mobile端末の作法なのかもしれませんが、先日レビューを行ったmouseのMADOSMA同様、戻るボタン、Windowsボタン、検索ボタン(デフォルト設定ではCortana起動)はソフトキーなものの、液晶の表示エリア外にあり、これらのボタンで画面の表示エリアを食わない作りになっています。
各種コネクタなどの外観
液晶側のいわゆる額縁部分はつやありの黒、裏側は着せ替えパネル的に色違いのカバーを付け替えることで端末の雰囲気を変えられます。標準で3色カバーがついているのはうれしい配慮です。
カバーの質感はプラスチック感はしっかりとあり、お値段相応の質感になっています。ただ、逆にその感じがカバーの色によってはいい意味で軽い、ポップな感じの演出につながっているかもしれません。
リセット用の穴は本体下側にあります。残念ながらストラップホールは設けられていません。
電源投入から最初のサインインまで
まず最初に付属のバッテリーの充電を行ないますが、充電用のマイクロUSBコネクタは本体上側にあり、ヘッドフォン用のミニジャックも本体上側についています。
このため、L字型コネクタのUSBケーブルだと、充電時にヘッドフォンのコネクタと干渉するケースもあります。
最初の電源投入時の初期設定の画面の文面や流れはパソコン版のWindows 10とよく似ていて、一度パソコンでWindows 10の初期設定を行なったことがある人は、全く戸惑うことなくスタート画面表示まで持って行けるでしょう。
今回試用したDiginnos Mobileでは、アプリの多くが展開され切れていない状態が初期状態だったようで、初期設定の中でアプリなどを展開する処理が必要になりました。
その処理がかなり時間を要し、かつ、バッテリーもかなり消費していました。このため最初の起動前にはバッテリーをフル充電しておくか、ACアダプタを接続した状態で初期設定を行なう方が良いかもしれません。
最初にスタート画面のタイルが表示された段階で、ストレージの利用状況はこのような感じです。
その後、アプリの更新などを行ないます。Office Mobileは恐らく、アプリのショートカットのみで実体がない状態で出荷されていると思われますので、これらも起動を行なってアプリ本体をインストールします。
これらの作業後、ストレージの使用状況は次のようになりました。
その他のスマートフォンでも起こることですが、システム任せで一気にアプリの更新が走るとアプリ同士で何かがバッティングするのか、アプリの更新が滞ることがあります。こういった場合には全てのアプリの更新を一旦止めて、Windows 10 Mobileの場合には2つずつ手動で更新を行なった方が、逆に早く更新を終了させることが出来ます。
ちなみにWindows 10 Mobileでは、アプリ更新は2つずつ完全に並列して実行可能になっています。
16GBストレージがある部分はかなり大きく、アプリ更新後でもストレージの空き容量にはかなり余裕があります。
液晶の表示
液晶の解像度はフルHDではなく、1280 x 720ドットのいわゆるHD解像度の液晶ですが、ドット密度自体は十分に高く、通常の使用の範囲ではドットが見えることはほぼありません。また、フォントの表示もとてもキレイです。
液晶の色味は若干黄色みがかっていますが、普通に利用している範囲では、その黄色みが気になることはほとんどありません。
バックライトの明るさを自動調整に任せると、若干暗めの設定が選ばれることが多い感じです。
タッチパネルの反応
最近のスマートフォンらしくタッチパネルの反応はかなり良好です。指先の動きに良く反応します。アプリの操作はスクロールなどもとてもスムーズで、SoCがローエンドに近いものであるハンデを感じさせません。
ただ、なぜかWindows 10 Mobileのスタート画面のタイル表示の部分のみ、スクロールの重さを感じます。指先の操作にはきちんと反応しているので、いわゆる「もっさり感」とは違うのですが、予想したスピードではスクロールしてくれません。
操作の仕方によっては予想に近いスクロールスピードが出そうな雰囲気もあるので、Windows 10 Mobile側のチューニングが進めば違和感は解消していくのかもしれません。
アプリ操作の体感速度
Diginnos Mobileはメインメモリが1GBと少なめですので、その部分が操作感に及ぼす影響がどんなものか気になっていたのですが、特にアプリ起動などでも操作感への悪影響はほぼないと言っても良さそうです。Office Mobileなども含め、アプリの起動、動作ともとても軽快です。
時々、スクロールのスピードが速い場面では、画面書き換えのコマ数が少し落ちるような雰囲気がありますが、スクロールのスピード自体は速くきちんと操作についてきますので、使う際の違和感はほとんどありません。
試用した中ではマップアプリに関しては、SoCのパワーの限界が見える動作になります。指先の動きに素早く反応はしますが、その後のスクロールがなめらかに動いてくれません。
ただ動き方は単なるパワー不足と言うよりも、Windows 10 Mobileのタッチパネルドライバのフリック操作へのチューニング不足と絡んでしまって、微妙に不自然な動作になっているのかもしれません。
反応が「そういうものだ」と一度理解してしまえば、あとは特に問題なく使えるレベルではあります。
スタート画面、ロック画面とアプリの一覧
Diginnos Mobileのほぼデフォルト状態のスタート画面はこのような形です。アクセントカラーは青系に設定されていて、パソコン用Windows 10のスタートメニュー(スタート画面)とほぼ同じものです。パソコンのスタート画面と同様に、ライブタイルの設定を行なうと楽しい見た目になります。
ロック画面はこちらで、パソコン版のWindows 10のデフォルトの壁紙の絵柄が使われています。
プリインストールアプリの一覧はこちらですが、こちらもパソコン版のWindows 10で見慣れた名前が並びます。
ベンチマークと実際の操作感
ベンチマークには、Googleの開発しているWebブラウザのJavaScriptエンジンの性能を測るOctane 2.0を走らせてみました。本来はWebブラウザの性能を見るためのベンチマークアプリですので、厳密にはスマートフォン自体の性能とは直接はリンクしませんが、性能の目安にはなると思います。
結果はトータルスコアで1631となりました。参考として現行のAndroidOS系のスマートフォンではハイエンドクラスに当たる、Xperia Z5の結果を載せておきます。
(左がDiginnos Mobile DG-W10M、右がXperia Z5)
数値にはとても大きな差が出ていますが、実際のブラウザの操作感としてはこのような差を感じることはありません。Windows 10 Mobileの標準のブラウザであるEdgeでは、表示が重めのページでも描画やスクロールはかなりスムーズに行なうことが出来ます。
ただ重めのページでは、画面描画が始まる前のデータをダウンロードする段階で少し待たされる感があって、描画が始まるまでに少し時間があります。その待ち時間の間は画面は真っ白の状態のままで、画面一番下のプログレスバーのみが伸びていく形になります。この部分で、実際の体感速度の面で若干損をしている感じがあります。
ダウンロードを行ないながら描画可能な部分から画面を書き換えていけば、利用者が待たされている感を減らせるはずです。今後のEdgeのチューニング待ちの部分かもしれません。
カメラの画質
カメラアプリはWindows 10 Mobile標準の、マイクロソフト製のカメラアプリがそのまま使われています。
非常にシンプルな作りですが、モードを切り替えることでカラーバランスの補正や露出補正など、デジタルカメラに良くある機能はだいたい使えるようになっています。
設定の中には画面の縦横比を指定するメニューはありますが、直接画像の解像度を指定するメニューがありません。縦横比4:3ではイメージセンサーのフル解像度での撮影になりますが、16:9ではちょっと変わった画素数での撮影になります。16:9では2592 x 1456ドット、4:3では3264 x 2448ドットの画像が生成されます。
写真を実際に撮影してみると他機種と同様にマイクロソフト製のカメラアプリを使っているにもかかわらず、出来上がる画像がかなり異なるのにちょっと驚きました。
撮影した写真の仕上がりは、ちょっと前の携帯電話風の写真に仕上がります。色ヌケの良さをもう一歩頑張って欲しいのと、ドットバイドットで見ると取り切れていないノイズがそれなりに見られます。
また、青空を多く画面に入れた写真では、空の雲などがマゼンタ系の色にすこし転びます。朱に近い赤もピンクっぽい色合いに仕上がるケースがあります。青空の青はかなり好ましい色合いになりますので、カラーバランスの取り方をもう一歩頑張ってもらえれば、全然印象の異なる写真に仕上がるはずです。
レンズには図形歪みは少ないようで、建築物などの撮影は安心して行えます。
撮影した写真のEXIFデータから撮影時の情報を読んでみると、スマートフォンのカメラとしてはベース感度が比較的高感度のISO100程度の設定になっているようです。これをISO50程度に感度を抑えたところからスタートできれば、明るい条件の下での写真の質は改善できるのかもしれません。
ただ、以前の携帯電話のカメラのように、ノイズをべったりと油絵のようなタッチで塗りつぶしてしまわないところには好感が持てます。
その他の気づいた点
Windows 10 Mobile搭載スマートフォンでは、外部スピーカーとヘッドフォン/イヤフォンのボリュームは独立して管理されています。それぞれ別の設定で再生に適したボリュームに調整することが出来ます。細かな部分ですが、気の利いた機能だと思います。
外部スピーカーはかなり大きな再生ボリュームにすることが出来ます。さすがに再生のクオリティは少しガチャガチャした感じの音質になって音楽鑑賞には向きませんが、ボリュームを上げても音割れはあまり発生しませんでした。
ヘッドフォンでの再生は低音にブーストがかかっている感じで、ベースなどの音の存在感がすごく大きくなります。バランスは決して良くはありませんが、音楽のジャンルによってはピッタリ合う楽曲もありそうです。
音質自体は、端末の価格を考えるとよく頑張っていると思います。バランスの問題はありますが、再生自体はかなりクリアですね。再生ボリュームもかなり大きく出来ます。
FLAC形式のハイレゾ音源も標準のGroove ミュージックアプリでそのまま再生可能です。ただし、恐らくCDクオリティにダウンサンプリングしての再生だと思われます。
まとめ
Diginnos Mobileを試用して感じたのは、Windows 10 Mobileの機能を欲張らない感じでシンプルにまとめたが故の扱いやすさです。
ルック・アンド・フィールがパソコン用Windows 10と非常に良く似通っているのも、PCユーザにはありがたいところです。アプリもよく似ており、というよりは、ユニバーサルアプリとして作られたものは、恐らく同じものが搭載されているのだと思います。
このため、パソコンでWindows 10を使っている人は、新しいOSのスマートフォンの作法に慣れなければいけない、という導入初期の敷居が大幅に低くなっていると思います。
Diginnos Mobileでは搭載してるSoCが今の世代の製品のなかではローエンドクラスに当たるもののため、どうしても処理速度には限界はあって、使うアプリによっては通常の利用の延長でもそこにぶつかることがあります。
ただ、そういった限界点が見えたとしてもその機能が使い物にならない状態にはならない、というところでうまくバランスは取られているように思います。
メール、インスタントメッセンジャー、Webブラウザ、Officeソフトなど、一般に多く使われる機能は基本的にカバーされていて、操作性もこなれており、スマホゲームを特に求めていない人には十分役に立つスマートフォンに仕上がっていることを実感できました。
Diginnos Mobile価格面でも非常にインパクトのあるものを打ち出していますので、ハイエンド機一辺倒だった日本のスマートフォン市場に一石を投じる存在になってくれればと思います。
初号機の動き次第かもしれませんが、カメラ性能やSoCのランクを引き上げた兄弟機の登場も楽しみな気がします。