非メジャー系クラウドストレージ「ULTRA DRIVE」ってどう?容量単価は最強級
存在自体がすっかり当たり前のものになって意識せずともいつの間にか使っていた、なんてことも増えたであろうクラウドストレージのサービス。定番のサービスは大手の何社かで固まってしまった感がありますが、後発のサービスがない訳でもありません。
ただ、先行する大手に対抗するためには何らかの尖った武器を持つ必要がある訳ですが、容量あたりの単価の安さを武器の一つとして名乗りを上げたのが今回取り上げるULTRA DRIVEです。
こちらのサービスはISPの老舗ブランド、リムネットも運営するイージェーワークスが手がけています。
著者もとあるきっかけからこのサービスを利用可能な環境が整いましたので、大手ではないクラウドストレージULTRA DRIVEの使いごこちがどんなものか、少し使い込んでみました。
それをまとめてレポートします。
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ULTRA DRIVEはクラウドストレージサービスのニューカマー
ULTRA DRIVE、知名度は大手に比べるとまだ低いと思いますが、サービス自体は思っていたよりも歴は長めで2016年からスタートしていたようです。
このサービスの強みと弱点をまずはザックリまとめてみましょう。
ULTRA DRIVEの強み
ULTRA DRIVEの強みはなんと言っても容量あたりの単価の安さが一番に上げられるでしょう。4TB 1ヶ月分の料金が800円です。
年間でも9,600円とクラウドストレージでは最安を競うサービスの一つでしょう。ちょっとした裏技的なモノを使うとさらに割安に利用可能でもあります。
次のポイントはメリットにもデメリットにもなり得るものですが、基本的な操作の多くが「手動」となるため、携帯電話回線経由でネットに接続しているときに思わぬ同期処理が走って通信データ量を無駄に使ってしまう、なんてことがありません。
また、ストレージの容量に余裕がないデバイスで空き容量を使い切る心配も少なくなっています。
ULTRA DRIVEのウィークポイント
逆にULTRA DRIVEの弱点となるのも、操作方法がほぼ手動操作になる部分なのが面白いところかもしれませんね。
OneDriveやGoogle Driveなどのメジャーどころのクラウドストレージサービスが持つ、さまざまなちょっと気の利いた機能はこのサービスには備わっていません。
すべてをユーザーがコントロールする必要があります。
ある意味、「玄人向け」とも言えるかもしれません。
ULTRA DRIVEは容量あたり単価最強級
大手のクラウドストレージサービス、例えばDropBoxだとまとまった容量のプランの2TB版だと、月額1,500円、年払いで14,400円です(※公式通常版)。
4TB分が年9,600円で利用できるULTRA DRIVEと単純な容量あたり単価を比較すると、こちらのサービスの方が数倍割安になります。大容量のクラウドストレージを必要としているユーザーならば利用を検討する価値があるサービスと言えるでしょう。
ただし、大手と比べると機能面はかなりシンプルで運用面はほぼ完全にユーザーに委ねられる形になります。その部分のコスト差をどう考えるかですね。
「気が利かない」と考えるか、「余計なことをしない」と見るか、それによってもユーザーごとに実コストパフォーマンスはかなり変わってくるでしょう。
ULTRA DRIVEの機能はプリミティブ
ここまででも触れていますがULTRA DRIVEの機能的な面はかなりシンプルで基本的なものに限定されています。サービス側があれこれなんでも自動でやってくれるタイプのクラウドストレージではありません。
雰囲気はパソコン黎明期のソフトのような感じも。
基本すべてマニュアル操作
DropboxやGoogle DriveなどメジャーどころのクラウドストレージはWindowsであればファイルエクスプローラーと、サービスがかなり統合されたカタチになっていいます。ローカルなストレージとクラウドストレージの違いをあまり意識せず使えるインタフェースになっています。
これに対しULTRA DRIVEはパソコン側とはあまり密に融合していないサービスです。多くの操作には専用クライアントが必要です。
自動化できる作業はスマートフォンの写真のアップロード、あとはユーザーが指定したファイルやフォルダのバックアップあたりにまでなります。クラウド側とローカルストレージの同期も手動で明示的に行なったときのみ実行されます。
ファイルやりとりも基本すべてクライアントアプリ経由
エクスプローラーにクラウドストレージが統合されたサービスでは、特定のフォルダにファイルをコピーすればクラウドストレージ側にも自動でコピーが作られますが、ULTRA DRIVEではこういった処理は専用クライアントで行なうことになります。
クライアントソフトの見た目や操作感から、雰囲気的には外部のftpサーバに専用クライアントでデータの転送を行なうような感じになります。どちらかというとクラウドストレージを扱う感触ではないかもしれませんね。
同期用のフォルダにデータをローカルでコピーしたあと、同期処理を手動で起動してクラウドストレージにコピーを作ることもできますが、クラウドストレージ側のファイル配置を自由にコントロールしたいならクライアントアプリのマニュアル操作でのファイルコピーの方が分りやすいでしょう。
ただ複数デバイスでのファイル共有は同期用フォルダを使った方が楽かもしれません。
ULTRA DRIVEの使い勝手
ここまで著者が使ってみた中でのULTRA DRIVEの使い勝手をまとめてみます。
トータルでの感触を一言でまとめるならば、
「疎結合なクラウドストレージ」
あたりになるでしょうか。
あるいは、「ネットワークマウントせずに使うNAS」でもいいかもしれません。
より具体的に使用感をまとめます。
クライアントアプリ
ULTRA DRIVEを使う上ではこのアプリが完全にすべての結節点、ジャンクションになる訳ですが、見た目の雰囲気的にも使用感的にも「GUIベースのftpアプリ」な感じが強いと思いました。
ローカル側のエクスプローラーとはファイル・フォルダのドラッグアンドドロップで普通にデータのやりとりが可能ですが、使う際の雰囲気は「サーバとの間」のデータの転送になります。一体感は薄い、ということです。
機能がシンプルですしファイル操作でドラッグアンドドロップを受け付けてくれますから、使う上で迷う部分はほとんどありません。
ありませんが、クラウドストレージ上のファイルを利用するときにはどうしてもワンクッション挟む雰囲気になるのが弱点と言えば弱点かもしれません。
クラウドストレージが「完全に外部のストレージ」として独立している使いごこちです。
Webサービス
続いてULTRA DRIVEをWebからアクセスした場合の使用感です。
機能的にはULTRA DRIVEのクライアントアプリのファイル操作部分だけを実装したような雰囲気で、とてもシンプルな作りになっています。
OneDriveのようにオフィス形式のファイルにはWebアプリ版のオフィスソフトが起動する、というようなプラスαの機能はありません。基本的なファイル操作とアップロード/ダウンロードに特化した作りですね。
より本格的にクラウドストレージを操作する必要があるデバイスにはアプリをインストールした方がいいでしょう。バックアップ機能にもクライアントアプリが必要になりますし。
シェル統合はかなり限定的
ULTRA DRIVEはPC側との結合が弱いクラウドストレージですが、Windowsの場合には全くシェル統合が行なわれていない訳でもありません。
ただ追加機能はかなり限定的で、右クリックメニューからULTRA DRIVEのルートディレクトリにファイルやフォルダを送る、バックアップを行なう機能のみ。「送る」機能では送り先フォルダが現時点では指定できませんので、使い途は限定されてしまいます。
ここの自由度が上がると大幅に使い勝手が良くなりそうなのですけれど。
今後の改善に期待、です。
ULTRA DRIVEのプラン
今のところULTRA DRIVEの料金プランは一つだけ。
月額料金制で4TB 1月分800円のプランのみです。
容量の追加や小容量プランもないので非常にシンプルです。
年課金のボリュームライセンス的な割引きプランがないのはちょっと残念かもしれません。容量が大きなプランの分、長く使い続けるユーザーが多そうですから。
ULTRA DRIVEをよりお得に使う裏技的なもの
実はULTRA DRIVEをかなり割安に利用可能になる裏技的なモノが一つあります。
ULTRA DRIVEと同じ会社が運営しているプロバイダサービス、リムネットのサービスを契約することです。ホームページサービスとプロバイダのメールアカウントを利用できる月額料金550円のプランの選択可能なオプションに、ULTRA DRIVEが設定されているのです。
カスペルスキーセキュリティとの選択制ですが、どちらのオプションを選んでも追加料金は発生しません。
つまり実質、年6,600円でULTRA DRIVEのフル機能が利用可能な訳です。年あたりだと通常より3,000円お得になります。
ULTRA DRIVEのまとめ
ULTRA DRIVEは使い方も仕組み的にもクラウドストレージサービスなのは間違いありません。ですが、先行するメジャーなクラウドストレージとは使い勝手や雰囲気がちょっと違います。
他のサービスがOSとの一体感を強めてクラウドにあることを出来るだけ意識させない方向に動こうとしているのに対し、ULTRA DRIVEはあくまで「外付けの」クラウドである感触を残そうとしているようにも思えます。
その使い勝手の違いに抵抗がないユーザー向けのシステムと言えるでしょう。
メジャーなクラウドストレージの自動機能が「余計なお世話」に感じられるユーザーにもピッタリマッチすると思います。その分、データの管理はほぼ完全にユーザ任せとなるため、ある程度はスキルのあるユーザー向けのサービスだとも言えそうです。
デバイスとの距離感の違い、とでもいうような使用感の違いを上手に使い分けられるかがこのサービスを有効活用できるかどうかの鍵かもしれません。